研究概要 |
(1)「ペプチドを基盤とする反応場の設計と合成:ペプチドテザーを用いる分子内Diels-Alder反応の開発」では,アスパラギン酸,トレオニンのジペプチドをペプチドテザーとして選定し,分子内Diels-Alder反応を検討した。その結果,通常の分子間の反応では位置選択性が全く発現しない1-メチレン-2-メチル-2-プロペノールエステルとアクリル酸エステルとの系において,このジペプチドテザーは位置および立体選択性を高く制御することを見出した。この結果は,MM2遷移状態モデルおよびPM3とDFT法を組み合わせた遷移状態構造の計算による予測と非常によく一致し,これらの計算手法がフレキシブルなペプチドテザーの設計に利用できることを示した。計算化学を主導とするジペプチドテザーの分子設計を行い,位置および立体化学を制御した分子内Diels-Alder反応の開発に成功した。 (2)「ペプチドを基盤とする分子認識場の設計と合成」において, (2)-1「光学活性なポリアザ環状化合物の設計と合成」では,分子認識場を有するアザ環状化合物を設計し,N-置換アジリジンに対する位置選択的な解アルキル化を基盤とした合成法を開発した。特に大環状化合物の環化においてはN-ノシル化合物の分子内アルキル化が有効であることを明らかとし,9,12,15員環のポリアザ環状化合物の合成に成功した。 (2)-2「RGD残基を有する環状ペプチドのコンビナトリアル合成」では,分子認識能を有する環状ペプチドライブラリーを設計し,合成した。固相上に担持したヨウ化ベンジルアミンに対し,Fmoc-アミノ酸を順次縮合し,固相上でカルボニル化反応を行い,環状ペプチドの合成に成功した。この固相合成法を用い,3種類のヨウ化ベンジルアミン,4種類のペプチド,4種類の直鎖アミノ酸スペーサーの組み合わせからなる48化合物のコンビナトリアル合成を達成した。
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