研究概要 |
精密有機合成に利用できる官能基、位置、ならびに立体選択性に優れたコバルト触媒を用いる新規炭素-炭素結合生成反応を開発することができた。開発した新反応は、これまでのパラジウムやニッケルなどを用いた触媒反応にはない形式の新反応である。具体的には以下の通りである。1)コバルト触媒を用いたハロゲン化アルキルとアリルならびにベンジルグリニャール反応剤の交差カップリング反応、2)コバルトジホスフィン触媒を用いたハロゲン化アルキルとアリールグリニャール反応剤の交差カップリング反応、3)コバルトジアミン触媒を用いたハロゲン化アルキルとアリール、アルケニル、アルキニルグリニャール反応剤の交差カップリング反応、4)合成プロスタグランジンAH13205の合成、5)コバルト触媒を用いたハロゲン化アルキルあるいはエポキシドとスチレンの溝呂木-ヘック型反応、6)コバルト触媒を用いるシリル置換ジブロモメタンとシリルメチルマグネシウム反応剤による位置ならびに立体選択的1,2-ジシリルエテンならびに1,1,2-トリシリルエテンの合成、7)コバルト触媒を用いるアルキンのシン-ヒドロホスフィン化反応。これらの反応の開発を通じて、ハロゲン化アルキルを出発物質とする反応の有用性を明らかにし、ハロゲン化アリールやハロゲン化アルケニルを主に出発物質とする従来の遷移金属触媒反応に大きな変革をもたらすことができた。これらの研究は有機合成化学の深化につながるものと期待している。
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