研究概要 |
低原子価金属からの有機化合物への電子移動が微量の異種金属の添加により促進されるという効果について、とくに応用面をクロム(II)と微量のニッケルの系を中心に検討した。この系を用いるとハロゲン化アルケニルからアルケニルクロム反応剤が調製できるが、クロム反応剤が微量の水の添加では加水分解されにくいことを利用し、アルキンとアルデヒドのカップリング反応を開発し、2003年に速報として報告した(Org.Lett.2003,5(5),653-655)。この反応における水の添加効果などをさらに検討し、本論文としてTetrahedron Symposia-in-Printのニッケル特集号に投稿し、掲載が予定されている。 上記の研究と平行して、低原子価の金属錯体を用いる触媒反応の開発に取り組んだ。その結果、これまであまり有機合成に用いられてこなかったレニウム錯体を触媒として用いる、C-H結合の活性化を経由する新たな合成反応を開発した。主な研究成果をあげる。 1.芳香族アルジミンとアセチレンとの反応によるインデン誘導体の合成:レニウム触媒[ReBr(CO)_3(thf)]_2存在下、芳香族アルジミンと内部アセチレンを反応させることにより、イミンのオルト位のC-H結合の活性化がおこり、アセチレンの挿入が進行することを見いだした。さらにイミンへの分子内求核的環化反応と還元的脱離が進行し、インデン誘導体が得られた。 2.芳香族アルジミンとイソシアナートとの反応によるフタルイミジン誘導体の合成 3.芳香族ケトンとα,β-不飽和カルボニル化合物との反応によるインデン誘導体の合成
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