研究課題
本研究では、ラジカル重合において、分子量と立体構造の同時制御を可能とする立体特異性リビングラジカル重合を開発することを目的としている。とくに、遷移金属錯体などを用いたリビングラジカル重合系において、種々の極性溶媒を用いて立体構造を制御することで、その実現をめざす。1.遷移金属錯体と種々の溶媒を用いたメタクリル酸エステルの重合メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEAM)のラジカル重合を、種々の溶媒を用いて重合を行ったところ、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒中ではシンジオタクチック含率が高く、一方、フルオロアルコール中ではアイソタクチック含率が高いポリマーが生成し、溶媒によりポリマーの立体規則性を大きく変化させることが可能であった(rr=51-82%)。ポリマーのガラス転移温度は、タクチシチーに大きく依存した。また、これらの溶媒中でルテニウム錯体[RuCp^*Cl(PPh_3)_2]を用いて重合を行うと、ポリマーの分子量と立体構造が同時に制御された立体特異性リビングラジカル重合が進行した。さらにこの重合を用いることにより、立体規則性が異なるステレオブロック共重合体の合成が可能となった。2.フルオロアルコール中での酢酸ビニルのヨウ素移動ラジカル重合の重合ヨウ素化合物(CH_2ICO_2Et)を用いた酢酸ビニルのヨウ素移動ラジカル重合を、種々のフルオロアルコール中で行うことにより、分子量が制御され、しかもシンジオタクチック含率の高いポリ酢酸ビニルの合成が可能となった(r〜60%)。とくに、ジオールタイプ[m-C_6H_4{C(CF_3)_2OH}_2]中では分子量分布も非常に狭くなった(M_w/M_n〜1.2)。ポリマー主鎖および末端構造の解析により、フルオロアルコール中では頭-頭結合の生成が抑制され、これにより分子量の制御能が向上している可能性が示された。すなわち、フルオロアルコールは、重合反応における立体選択性のみならず位置選択性の制御も行うことが示唆された。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (9件)
高分子 55・4
ページ: 250-253
J.Polym.Sci., Part A : Polym.Chem. 44・6
ページ: 2086-2098
ACS Symposium Series (in press)
高分子学会予稿集 55(印刷中)
Macromolecules 38・25
ページ: 10397-10405
高分子学会予稿集 54
ページ: 2482
ページ: 2483