研究概要 |
本研究では、ラジカル重合において、分子量と立体構造の同時制御を可能とする立体特異性リビングラジカル重合を開発することを目的とした。具体的には、遷移金属錯体などを用いたリビングラジカル重合系と、極性溶媒やルイス酸を用いた立体特異性ラジカル重合を、うまく組み合わせることにより、種々のモノマーのラジカル重合において、分子量と立体構造の同時制御が可能となることを見出した。両者の選択においては、一方が他方の重合制御を妨げない組み合わせを見つけることが問題であった。以下にいくつかの項目について簡単に述べる。 1.ルテニウム錯体とフルオロアルコール或いは非プロトン性極性溶媒の組み合せ RuCp^*Cl(PPh_3)_2を用いて、(CF_3)_3COH中で、メタクリル酸メチルの重合を行うことにより、分子量がよく制御され(M_w/M_n=1.07)、シンジオタクチシチーの高い(r=88%)ポリマーが得られた。また、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルでは、溶媒としてDMFを用いることにより、同様なポリマーが得られた。この重合を利用して、シンジオタクチック-アタクチックのセグメント鎖から成るステレオブロック重合体の合成も可能となった。 2.鉄錯体とルイス酸の組み合せ N,N-ジメチルアクリルアミドの重合を、鉄錯体([FeCp(CO)_2]_2)と共に、希土類ルイス酸(Y(OTf)_3)を用いて行うことにより、アイソ特異性リビングラジカル重合が進行した(M_w/M_n=1.87,m=82%)。 3.ヨウ素移動重合とフルオロアルコールの組み合せ 酢酸ビニルの重合をヨウ素化合物をアゾ開始剤と共に用いて、フルオロアルコール中で重合を行うことで、シンジオ特異性リビングラジカル重合が進行した(M_w/M_n=1.20,r=59%)。 4.RAFT/MADIX重合とフルオロアルコールの組み合せ N-ビニルピロリドンの重合を、キサントゲン酸エステルとアゾ開始剤の存在下、フルオロアルコール中で行うことにより、シンジオタクチシチーが高く、分子量制御されたポリマーが得られた(M_w/M_n=1.28,r=60%)。
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