生体親和性が高いと考えられる脂肪族ポリエーテル型デンドリマーの合成を段階的なConvergent法により行った。MALDI-TOF-質量分析は、ポリエーテルデンドリマーの構造解析にたいへん有効で、糖置換体の構造も明瞭に解析することができた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いた精製を繰り返し単一分子量からなる構造が明確な糖デンドリマーの単離ができたことを明らかにした。NMR測定の結果も目的とする糖デンドリマーの構造を支持していたが、分岐の欠陥のないデンドリマーが形成されているかという点に焦点をあてるとMALDI-TOF-質量分析による解析の方がより精度が高いと考えられる。 糖を有する脂肪族ポリエーテルデンドリマーの細胞認識におけるクラスター効果の評価を、レクチンを用いた赤血球凝集阻害試験により行った。糖の種類に特異的な認識が明らかになり、単糖を用いた実験と比較することでクラスター効果も発現していることがわかった。また、生体適合性を検証するために生物化学的酸素要求量試験を行った。その結果、糖をもたないポリエーテルデンドリマーと比較して糖をもつデンドリマーの方が効率よく代謝されることが明らかとなった。 さらに遺伝子輸送関連の研究を展開し、DNAとしては、プラスミドDNAのほかに子牛胸腺DNAなども用いて検討を行った。DNA/デンドリマー複合体の粒径を、動的光散乱測定により評価した。デンドリマー表面のゼータ電位測定を行い複合化挙動と関連付けて考察した。これらの実験を、デンドリマーの世代をかえて行い、比較検討し、分子サイズや分子形状と複合化能との相関を議論し、より高性能なキャリヤー設計にフィードバックした。
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