研究概要 |
本研究では、認識対象物質との相補的相互作用により形成されるチャネル形成能を有するペプチド集合体を用い、基質認識機能と信号変換機能を併せ持つ新規センシングシステムの構築を目的としている。 本年度は、タンパク質に対して特異的な認識能を有する受容体の構築を目的に、末端に種々の糖鎖を有するペプチドを合成した。具体的には、方末端にガラクトース、も一方の末端にピレニル基を有するポリメチルグルタメート(PMG,重合度34)を合成した。得られた糖ペプチドとPMGをモル比1:1で含む脂質との複合単分子膜を、ピーナッッレクチンを含む水溶液上に形成し、同レクチンとペプチド末端糖鎖との相補的相互作用による糖ペプチドクラスター形成を検討した。レクチンは糖鎖の結合部位を複数個有しているので、水相に加えたレクチンにより誘起される糖ペプチドクラスターは、クラスター中の糖鎖の立体配置が、同レクチンに対する固有の構造を形成し、特異的な受容体として機能することが期待される。クラスター形成は糖ペプチド方末端に導入したピレニル基のエキシマー発光より評価した。レクチンを含む水溶液表面に形成した糖ペプチド-脂質複合単分子膜では、レクチンを含まない水溶液表面形成した場合比べ、明らかに末端ピレニル基のエキシマー発光が増大した。この結果は、レクチンと糖ペプチド末端との相補的相互作用により、同レクチンに対し固有のクラスターを形成したことが示唆される。 また、昨年度得られた基質認識・情報変換機能を併せ持つ両親媒性ペプチド集合体を電極表面に固定し、デバイス化を行うために。電極基板の表面改質を行った。金蒸着ガラス基板表面に4,4'-ジチオジブタン酸の自己組織化単分子膜を形成し、その末端カルボキシル基を活性化させた上で、イオン導電層として、末端アミノ化ポリオキシエチレン(Mw=5000)で、両親媒性ペプチド集合体の固定化層としてポリアリルアミン(Mw=10000)でそれぞれ電極表面を被覆した。次年度以降、得られた電極基板を用い、基質認識機能と信号変換機能を併せ持つペプチド集合体のデバイス化を図る。
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