研究概要 |
本研究では、認識対象物質との相補的相互作用により形成されるチャネル形成能を有するペプチド集合体を用い、基質認識機能と信号変換機能を併せ持つ新規センシングシステムの構築を目的としている。 本年度は、多種・多様なタンパク質に対して特異的な認識能を有する受容体の構築を目的に、末端に種々の糖鎖を有するペプチドを合成した。具体的には、方末端にガラクトースあるいはグルコースを、もう一方の末端にピレニル基を有するポリメチルグルタメート(PMG,重合度32)を合成した。得られた糖ペプチドとPMGをモル比1:1で含む二分子膜ベシクルを調製し、各種レクチン(ピーナッツレクチンあるいはコンカナバリンA)を添加後、ゲル-液晶転移温度(40度)以上に加熱後、急速に冷却することで、加えたレクチンとペプチド末端糖鎖との相補的相互作用により形成される糖ペプチドクラスターを二分子膜中に固定化した。レクチンは糖鎖の結合部位を複数個有しているので、添加したレクチンにより誘起される糖ペプチドクラスターは、クラスター中の糖鎖の立体配置が、同レクチンに対する固有の構造を形成し、特異的な受容体として機能することが期待される。クラスター形成は糖ペプチド方末端に導入したピレニル基のエキシマー発光より評価した。添加したレクチンに対し相補的な糖鎖を有する糖ペプチド(ピーナッツレクチンに対しガラクトース、コンカナバリンAに対しグルコース)を含むベシクルのみで末端ピレニル基のエキシマー発光が増大し、各レクチンに対し膜中に固有のクラスターを形成したことが示唆される。また、このべシクル中に形成された糖ペプチドクラスターを利用したセンシングシステムの構築を目的に、LB法によらないペプチドクラスターの固定化法についての検討を行った。具体的には、認識対象物質との相補的相互作用により形成されたペプチドクラスターを含む二分子膜ベシクルを融合法により基板表面に固定化する手法について、その融合条件の基礎的な検討を行った。次年度は、電極基板表面に固定化したペプチドクラスターを用い、基質認識機能と信号変換機能を併せ持つセンシングデバイスのシステム化を図る。
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