研究概要 |
ナノ構造制御したハイブリッド型機能材料の設計するため,不飽和化合物を出発原料として反応場を制御しながら固相反応や重合を行い,高度に制御された構造を有する高分子材料を合成する。今年度は,層状高分子結晶を用いたハイブリッド結晶の設計と機能評価を行うため,ホストが有機ポリマーである点を生かして,まず有機/無機の層状ハイブリッド材料の作製を試みた。カウンターカチオンとしてアルカリ金属塩を用い,さらに銀塩の固相交換反応を行った。光還元により銀微粒子を層間で成長させ,微粒子のサイズや分布を制御することによって,吸収特性を制御したナノ積層型高分子結晶を構築し,金属微粒子と共役系ポリマーナノシートの相互作用による吸収特性,発光特性の変化を明らかにした。次に,光に対して応答するアゾ基をゲスト分子に導入して,紫外光/可視光照射による層状結晶の構造変化を行えるように分子設計を進めた。イソタクチックあるいはシンジオタクチック構造をもつ4種類の立体規則性ホスト高分子結晶を固相重合ならびに固相加水分解反応により合成し,それらホストにインターカレーションされたゲスト分子の構造をX線構造解析,顕微赤外分光法,およびラマン分光法を用いて決定し,ゲストアミンのアルキル鎖がホストポリマー鎖に直交あるいは平行して,かつ一定の傾きをもって層間に配列していることを明らかにした。さらに,官能基を含むゲスト分子をホストの二次元空間に配列し,特に,層間でH会合したアゾベンゼン誘導体のシス-トランス光異性化速度がホスト高分子との界面からの距離に応じて変化し,アミノ基とアゾベンゼンの間にスペーサーを導入すると光応答速度が10^3倍以上加速されることを見出した。また,二段階インターカレーションを新たに開発し,弱い分子間相互作用により層間に取り込まれた芳香族分子が固体中では通常見られない特異な蛍光特性を示すことを明らかにした。
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