研究概要 |
曲面状の共役系をもつホスト分子、カーボンナノリング(CNR)類を合成し、フラーレン類と非常に安定な錯体を形成することを見出した。本研究ではその成果をさらに発展させ、曲面状の共役系を基に多様な超分子システムを構築することを目的とした。本年度は、 1 これまで合成したフェニルアセチレンをユニットとしたカーボンナノリングは反応性が高く取り扱いが難しいことや、電子授受能力が低いななどの問題があった。そこで、縮合多環状芳香族化合物を円筒状に折り曲げた、本当のカーボンナノチューブの部分構造をもつカーボンナノベルト(CNB)の構築を検討した。ヘキサフェニルベンゼンのルイス酸触媒によるヘキサベンゾコロネン合成を最終ステップにすることを念頭に、アームチエアー型(7,7)および(8,8)カーボンナノベルトの合成をめざした。重要な合成中間体である(2,2)-m, m,, m, m-クウォーターフエニレノファンジインの合成に至った。 2 Grubbs試薬が6-ビニルビナフトール誘導体に対して活性が高く、容易にオレフィンメタセシス反応を触媒することを見出したことから、この反応を用いた、2,2'-ビナフトールユニットを持つ大環状シクロファン類の合成を検討した。ジメトキシ体はかなり大きな分子量をもつ環状オりゴマーの混合物であったが、ブチレン架橋した出発物からは、4〜6量体がメインとして得られ、ビナフトール酸素上の置換基によって環の大きさを制御できることがわかった。この結果は、オレフィンメタセシス反応が大環状共役化合物の合成にも有用なことを示す、重要な成果と考えられる。
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