(1)励起高スピンπ電子系の電気化学的性測定による基礎物性の解明 まず、これまでに光励起高スピン状態(励起四重項状態、励起五重項状態)をとることが明らかになっているアントラセン・イミノニトロキシドラジカル系、アントラセン・フェルダジルラジカル系のCV測定により酸化・還元電位を明らかにした。 (2)化学修飾により電子ドナー性を高めた分子の合成と基礎物性の解明 分子軌道計算の結果を参照しながら、ジメチルアミノ基等の電子供与性の置換基を、これまで明らかにしてきた励起高スピンπ電子系の適切な位置に導入した分子を新たに合成し、励起高スピンπ電子系の電子ドナー性の向上を実現した。これらの系が光励起高スピン状態をとることを時間分解ESRにより明らかにし、励起高スピン状態の微細構造テンソル等から電子供与基の導入が、電子状態に及ぼす効果を明らかにし、次に述べる励起高スピンπ電子系を電子ドナーとして用いた電荷移動錯体の形成のための基礎的知見を得た。 (3)励起高スピンπ電子系を電子ドナーとする電荷移動錯体の形成とその基礎物性の解明 一電子酸化によりラジカルスピンとHOMOに残った不対電子との間で強磁性的スピン整列がおこり高スピン状態が形成される事が期待される系を電子ドナーとして用いた電荷移動結晶を形成し、その電子状態と基礎物性を磁化率とESRの温度変化測定、光学吸収測定により明らかにした。 (4)ナノ秒領域からの時間分解発光、過渡吸収測定装置の組み上げ 高感度CCD検出器を、現有の吸収測定、蛍燐光測定、過渡吸収測定システム(光学系に温度変化クライオスタットを組み込んだ一部自作のシステム)に導入し、ナノ秒領域からの時間分解発光、過渡吸収測定を可能にした。
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