(1)励起高スピンπラジカルの一電子酸化状態の基底電子状態と、分子内スピン整列の解明 18年度の研究計画に従って、光励起4重項状態をとる安定ラジカルをSbCl_6^-のアンモニウム塩と反応させ得られたカチオシ分子の電子状態とスピン整列の解明を目的として、申請計画に記したようにグローボックス中で塩の単離を試みたが、系の不安定性のため現在まだ成功していない。そこで、反応途中の溶液をサンプリングしパルスESR測定により、三重項状態の同定と分離を試みたが現在までに明確な結果を得る事には成功していない。_そこで、一電子酸化でも安定と予想される系としてフェロセン部位(フェロセンは良い電子ドナーとして機能する)を光励起4重項状態安定ラジカルに導入した系を合成した。また、この系は(2)に示した様に光誘起電子移動による電子制御の分子内集積型モデル系をしても利用可能である事が確かめられた。 (2)電子ドナー/アクセプター分子内電荷移動集積系を用いた電子操作と物性制御の研究 当初の申請計画にあった光誘起電子移動を分子中で起こさせる目的で(1)でも述べた(i)電子ドナーであるフェロセンを励起高スピンπラジカルに化学結合で連結した分子内機能性部位集積系を合成し、その光励起状態の研究に着手した。この系では、励起状態でのフェロセン部位から、励起高スピンラジカル部位への光誘起電子移動と逆電子移動により特異な分極を生じる系を見出す事に成功した。また、(ii)エネルギー移動部位を同様に化学結合で連結した系では、励起状態で励起高スピンラジカル部位から機能性部位への光誘起電子移動と逆電子移動により特異な分極を生じる系を見出す事に成功した。(i)の系ではフェロセンは電子ドナーとして機能するので、適切な電子アクセプターとの電荷移動錯体を形成できれば、光電子移動による基底状態の電子操作が可能であると期待される。
|