研究課題/領域番号 |
16350080
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
冨安 博 信州大学, 工学部, 教授 (50016854)
|
研究分担者 |
三島 彰司 信州大学, 工学部, 助教授 (80092899)
天野 良彦 信州大学, 工学部, 助教授 (80273069)
樽田 誠一 信州大学, 工学部, 助教授 (00217209)
菅 博幸 信州大学, 工学部, 助教授 (60211299)
奥村 幸久 信州大学, 工学部, 助教授 (40243042)
|
キーワード | 超臨界水 / 石炭 / バイオマス / 水素製造 / 酸化ルテニウム / 触媒 |
研究概要 |
本研究は、超臨界水を用いて石炭およびバイオマス、廃プラスチック等の有機系廃棄物から燃料、特に水素、を製造する技術を開発することを目的とする。超臨界水を用いて有機物から水素を発生する方法は、古くは有機物を不完全燃焼させ、発生する一酸化炭素と水との反応(水生ガス反応)を利用する方法、あるいは金属触媒を使用する方法が知られている。しかしながら、既存の方法では有機物の分解率および水素の発生比率が十分ではなく、工業化には至っていない。本研究では、触媒として酸化ルテニウム(IV)を用いた。この触媒は我々が開発したものであるが、超臨界水中において有機物に対する分解率の高さはすでに実証済みである。その際発生する気体の主成分は二酸化炭素、メタンそれに水素である。有機物の処理で発生する気体の成分に変化はないが、それらの分布には大きな違いがあることが明らかになった。即ち、石炭とバイオマスでは水素の発生比率が比較的に高く、450℃の反応条件では13%、500℃では20%以上に達した。一方、廃プラスチックでは、水素発生率は低く7%程度であった。バイオマスについて詳細な実験を行った結果、リグニンの含有率によって分解率が大きく左右され、純粋なセルロースでは100%の分解が達成されたが、逆に純粋なリグニンでは7%しか分解しなかった。実際に製紙工場から排出される廃棄物(ペーパースラッジ)を処理したところ、27%の比率で水素が発生した。このことは本方法によるバイオマスの処理が有望であることを示すが、リグニンによる触媒毒に対する対策は今後の課題である。石炭は、種類により分解率が異なるが、おおむね30〜40%で、満足いく値ではなかった。だたし、水素発生比率は決して低くはなく、100gの石炭から約0.5molの水素が発生した。このことは、石炭に関しては、分解率を上げれば、水素製造法として極めて有望な方法であることを示すものである。超臨界水中において、酸化ルテニウムを触媒とする方法は、有機物の分解率では他の触媒(例えばニッケル触媒)を使用する方法よりも格段と優れており、今後の基礎データの構築により、新しい水素製造法として工業化に向けた展開が十分に期待できる。
|