研究課題
昨年度までに独自に開発した高効率合成法によって大量入手が可能になった環状ビス(3'-5')ジグアニル酸(c-di-GMP)の生理活性探索を行った。その結果、本物質は黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成を阻害する事、さらに同菌のHeLa細胞への感染を抑制することを、in vitro実験および、マウスを用いたin vivo実験により見出した(メリーランド大学(米)およびシェルブルーク大学(加)との共同研究)。このことにより、c-di-GMPがバイオフィルム感染症治療薬としての可能性をもつ事が示唆された。また、in vivo実験では、c-di-GMPはバイオフィルム形成阻害だけでなく、マウス(検体・宿主)の黄色ブドウ球菌に対する免疫力を増強する事も見出した(メリーランド大学との共同研究)。すなわち、黄色ブドウ球菌に感染させる前に、c-di-GMPをマウスに投与すると抗体(IgG1、IgG2)およびT細胞の生産が促進され、同菌に対する免疫性が増し、感染されにくくなる事を見出した。これらの結果のうち、前者のバイオフィルム形成阻害作用は既に予言されていた事を実験的に証明したに過ぎない結果であるが、後者の宿主・検体の免疫力を高める作用は、これまで全く予言されていない、本研究によってはじめて発見された事柄である。本発見は、換言すると、c-di-GMPは免疫応答活性化させ、細菌感染予防する薬、すなわち、免疫刺激剤として使用できる事を示唆するものであり、極めて重要な発見である。さらに、c-di-GMPは緑膿菌(ハーバード大学(米)との共同研究)、大腸菌(メキシコ国立大学との共同研究)、および環境細菌である鉄還元菌(スタンフォード大学(米)との共同研究)のバイオフィルム形成においても鍵物質として働いている事を見出した。くわえて、c-di-GMPは大腸ガン細胞の増殖を抑制する効果をもち、同ガンの治療薬としての可能性をもつ事も見出した(メリーランド大学との共同研究)。
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