研究課題/領域番号 |
16350096
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下山 淳一 東京大学, 大学院工学系研究科, 助教授 (20251366)
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研究分担者 |
岸尾 光二 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (50143392)
堀井 滋 東京大学, 大学院工学系研究科, 助手 (80323533)
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キーワード | 超伝導体 / 層状構造 / 臨界電流特性 / 希薄ドーピング / 磁束ピンニング |
研究概要 |
本研究では、層状の結晶構造を持つ超伝導体の臨界電流特性の劇的な改善を目的として、新しい手法である適切なサイトに希薄な濃度の元素ドーピングを実施している。本研究の主たる狙いは希薄にドープした元素を超伝導コヒーレンス長よりも遠い間隔で分布させ、構造歪みや電子散乱を介して弱い超伝導領域を形成し有効な新規ピンニングサイトとして機能させることである。17年度までに、実用超伝導材料物質である希土類123系、ビスマス系および2ホウ化マグネシウムの臨界電流特性改善に対してこの手法が普遍的に有効であることを示すことができた。18年度はさらなる臨界電流特性の改善と本手法の材料応用への適性を示すことを目指し以下の研究を実施した。 希土類123系においては、今年度は複数サイトへの希薄ドープによって溶融凝固バルクとして液体窒素冷却下、2〜3Tの磁場領域での臨界電流密度が大きく改善すること、Tbの微量添加によってBaTbO_3微小析出物が生成し低磁場の臨界電流密度は10万A/cm^2以上になることを見出した。このほか微量なAg置換も臨界電流特性改善に有効な手法となることを発見した。一方、ビスマス系2212相超伝導体単結晶ではPbドープ量を実用Bi系2223線材並に抑えた組成でCaサイトへのYbやLu、またSrサイトへのNd希薄ドーピングがを行い、これらが30K以下における臨界電流密度の改善に有効であることを明らかにした。後者の結果はBi系2223線材に即応用できる手法である。2ホウ化マグネシウムにおいては高密度バルク体の微量含有酸素分布の制御によって、20Kでの記録となる臨界電流密度130万A/cm^2を達成し、Cの適切な微量添加によって磁場下の特性も大きく改善した。また微量Ag添加が低温相生成に有効であることも発見した。以上の研究より、希薄ドーピングが実用材料開発に適用できる手法であることが示せた。
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