研究概要 |
本研究は、実用超伝導材料物質またはその候補であり層状の結晶構造を持つ、希土類123系、Bi系の酸化物高温超伝導体、さらに金属系超伝導体中最高の臨界温度を持つ二ホウ化マグネシウムを対象物質とし、独自の化学的な希薄ドーピング法によってこれらの臨界電流特性の改善を目指したものである。物質本来の強い超伝導マトリクスの形成と、希薄不純物ドープによるnmレベルの弱超伝導領域の導入による磁束ピン止め力の強化の観点から、様々な金属サイトに選択的な元素置換を試みそれらの臨界電流特性改善効果を系統的に評価した。 RE123系では、溶融凝固バルクを中心に研究を進め、REサイトへの異種REドープ、BaサイトへのSrやREドープ、CuO鎖のCuへのFe,Co,Ga、Agドープ、全て希薄なドープ量において磁場下の臨界電流密度(4)を大きく改善することを見出した。なかでもCuO鎖へのドープが最も効果的で、薄膜においてもピン止め力の向上を認めた。 Bi系ではBi2212単結晶、Bi(Pb)2212単結晶において金属組成を定比に、またキャリアドープ状態を最適ドープ〜弱いオーバードープ状態に制御することが臨界電流特性の改善に極めて有効で、さらにBi(Pb)2212単結晶ではCaサイトやSrサイトへの希薄REドープが劇的に4を高めることを発見した。 これらの研究より化学的希薄ドープ法が普遍的に有効な臨界電流特性改善法であることが明確となり、高特性実用材料開発に対して重要な知見となったと考えている。 二ホウ化マグネシウムにおいても、MgサイトへのAl微量置換が4の改善に有効であること、Yb、LuがMgサイトに微量置換できること、微量Ag添加が相生成温度を低下させることを見出した。さらに微量C置換による臨界電流特性改善の機構も明らかにした。
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