オリゴエーテル置換基と電子求引性置換基を有する常温で液体であるリチウムオルトボレートを電解液として用いると、リチウム二次電池は室温以上で良好な充放電特性を示すが、低温では高い粘性のためイオン導電率が低く二次電池への使用に問題があった。そこで、粘度低下剤を添加することによって低温でのイオン導電率が改善されることを明らかにすると共に、最適組成も決定した。イオン導電率をさらに改善するための添加剤についても検討した。 リチウムボレートとリチウムアルミネートを混合した塩を含むポリエチレンオキシド電解質膜は、単独塩を含む膜に比べイオン導電率が高くなり、室温で10^<-4>Scm^<-1>オーダーに達することを見出した。このポリマー電解質膜を用いてリチウム二次電池を作成したところ、良好な充放電特性を示すことがわかった。 (C_6F_5S)_4B^-Li^+塩は不溶性であるが、フッ素系ポリマーあるいはポリエチレンオキシド中でイオン伝導が起こることを見出した。この現象を詳細に検討した結果、不溶性リチウム塩とポリエチレンオキシドの界面領域に新たな電解質相が形成され、その領域でリチウムイオン伝導が起こることを明らかにした。イオン伝導の活性化エネルギーが小さいことおよびリチウムイオン輸率が高いことより、これまでにない全く新しいポリマー電解質の設計概念となると共に、従来にない特性を持つ電解質材料として発展が期待される。なお、リチウム二次電池に応用したところ、電池として作動できることも確認できた。また、部分電荷密度計測によりリチウムイオンとアニオンとの相互作用の小さい塩としてイミダゾール置換リチウムオルトボレートを合成した。不溶性塩であり、かつより安価に合成できる。この塩もポリエチレンオキシドと混合することによりリチウムイオン伝導が起こることを明らかにした。また、不溶性塩を用いたポリマーゲル電解質では、可溶性塩に近いイオン導電率を示すこともわかった。これらの不溶性塩は熱安定性も高いため高温作動電池への応用も可能であることもわかった。
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