研究概要 |
本年度は,ビス(アルキルカルコゲノ)基をもつ一連のTTP誘導体ならびにビス(セレノメチル)-TTP(BSM-TTP)を合成し,それらをドナーとして用いた分子性導体の構造と物性について検討した。 (BTCn-TTP)I_3(n=4,5):BTC_4-TTPならびにBTC_5-TTP塩共にドナーとアニオンの組成比は1:1であり,お互いにほぼ同じ分子配列を有している。これらの物質では,二量化したドナー分子平面の真上にアニオンが存在するといったDDADDA型の交互積層構造を形成している。また,ドナー分子から成るダイマーのside-by-side方向にはI_3-アニオンが存在するため,この方向の伝導パスは存在しない。従って,伝導パスはa,c方向に形成している2本の擬カラム方向に存在すると思われる。これらの塩は室温において,10^<-4>-10^<-3> Sem^<-1>の伝導性を示し,活性化エネルギーは0.18-0.23 eVと大きな値を示した。 (BSM-TTP)_2SbF_6:ドナーとアニオンの組成比は2:1であり,ドナー分子は一般位置,アニオンは対称心上にある。BSM-TTP分子は擬カラム構造を有するβ"型配列をとっている。硫黄類縁体であるBTM-TTPはSbF_6アニオンとの間にβ型およびθ型構造を有する2種の2:1塩を与えることが明らかとなっており,分子配列に対するセレン原子の効果について今後検討していく必要がある。この塩は室温において,60 Scm^<-1>の伝導性を示し,5 Kまで金属的な温度依存性を示した。バンド計算によると二次元的な閉じたフェルミ面を有することが示唆された。
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