多波長発振が可能な微小有機レーザー・ダイオード(LD)の開発を目的として、分子修飾により発光波長の制御が可能なπ共役系オリゴマーが自己組織化した低次元結晶を作製した。その光励起発光増輻現象を観察するとともに、それらのp型、n型有機半導体を接合した薄膜を用いて有機電界効果型トランジスター(FET)作製してキャリア注入・輸送特性を評価した。 1.自己組織化した低次元結晶の光励起発光増幅 p型半導体発光性分子として知られている種々のチオフェン・フェニレンオリゴマーを溶液成長させることにより、大きさがサブミリメートル、厚さが数μmの薄板状結晶を作製した。この結晶を波長可変YAG/OPOパルスレーザーを用いて光励起発光スペクトルを測定した結果、励起波長に依存して、線幅〜10nmのAmplified Spontaneous Emissionがさらに狭線化した線幅〜0.5nmのStimulated Resonance Raman Scatteringに基づくレーザー作用が得られた。この現象は、分子が規則配列した結晶中でのコヒーレントな分子振動に基づき、室温で安定に起こることから、有機固体レーザー材料への応用が有望である。 2.ヘテロ接合型有機半導体薄膜のFET特性 有機LDを実現するためには、電子と正孔の両極キャリアを効率よく注入し再結合させる必要がある。そこで、本研究ではn型分子としてC60やペリレン誘導体をp型のチオフェン・フェニレンオリゴマーと共蒸着あるいは積層によりヘテロ接合させてFET素子を作成した。その結果、共蒸着ヘテロ接合により良好なambipolar特性が得られ、電子と正孔の注入が可能であることが示された。また、積層膜においては膜構造により特性が変化し、絶縁層界面で膜形態を不均一にすることによりp/n接合が形成され、ambipolar特性が得られることがわかった。
|