研究概要 |
フォトリフラクティブ効果とは,光を吸収することによって屈折率が可逆的に変化する現象である.フォトリフラクティブ効果は,二次元光信号(画像信号)の制御や演算に直接応用できるため,優れた材料の出現が待たれている.フォトリフラクティブ物質中でレーザー光を干渉させれば,屈折率の値が周期的に変化した格子縞(屈折率格子)が形成される.有機系材料は内部電界によって分子配向に変化が生じるため,見かけの屈折率が大きく変化する(配向増幅効果).しかし,現状では応答速度が遅い事が実用化への障壁になっている.国際会議でも,この応答時間を如何に短くするかが関心を集めている.研究代表者は強誘電性液晶を用いることで,大きなフォトリフラクティブ特性と高速応答性を同時に達成できないかと考えた.研究代表者は,光導電性化合物と電荷発生剤をドープした強誘電性液晶中で,光の干渉によって内部電界を発生させ,それによって強誘電性液晶の自発分極の変化を誘起する研究を開始した.強誘電性液晶では自発分極ベクトルの方向の変化によって液晶分子の向きが変化する.一般の分子配向変化型フォトリフラクティブ効果が,内部電界に分子の双極子モーメントが応答して生じているのに対して,強誘電性液晶のフォトリフラクティブ効果は自発分極というバルクの分極が内部電界に応答する.強誘電性液晶の自発分極の電界応答は非常に高速であるので,フォトリフラクティブ効果の応答の高速化が可能である.本研究では,交流電界印加下における強誘電性液晶のフォトリフラクティブ効果について、印加電界の周波数や液晶の分子構造による影響を検討した。その結果,強誘電性液晶のモーションモードフォトリフラクティブ効果によって,20ms以下の高速応答が安定的に得られることが明らかになった。
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