従来の二次電池に比べて格段に高エネルギー密度な電池として、リチウムイオン二次電池は実用化され、携帯電話やパソコンなどの移動用電子機器の需要拡大に大きな寄与を果たし、社会的に大きなインパクトを与えた。また、将来のエネルギー環境問題解決のために、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、各家庭用の据置型燃料電池などの実用化が急務でありそのためのキーテクノロジーとして大型の電気エネルギー蓄積装置の開発が必要となっている。 次世代正極活物質として従来の酸化物に代わるポリアニオン化合物であるオリビン型リン酸化物が注目されている。現在、この化合物の電気化学的トポケミカル反応時の電子構造変化、拡散に大きな影響を及ぼす遷移金属周囲の局所構造変化は不明であり、材料設計上の問題となっている。本研究は、X線吸収微細構造による実験的アプローチと第一原理計算による理論的アプローチを用いて電子論的に解明し、電気化学特性にデータを合わせて総合的に判断して材料設計指針を確立し、それを基に高エネルギー密度、高出力密度を有する新規正極材料を開発することを目的としている。本年度は、オリビン型構造のLiCoPO_4を固相反応で合成し、その電子構造についての知見を得た。軟X線を用いたXAFS測定は、電気化学的にリチウムを所定量脱離もしくは挿入させた後、長時間保持し、平衡状態に達しさせた後の電極について、PのK殻および酸素のK殻のX線吸収微細構造を測定するとともに硬X線を用いたCoK殻X線吸収微細構造法を用いて測定した。その結果、従来考えられていたよりも充放電に伴う酸素の2p軌道の寄与が大きいことが示唆された。
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