レーザ照射による局所加熱効果を利用し、ナノ結晶化を呈するガラス材料を用いてナノ結晶粒子の規則化構造創製に挑んでいる。本年度は、KNbO_3-TeO_2という、熱処理によりナノ結晶化を示し、かつ結晶化により本来は結晶に固有の高機能性(2次光非線形性)を発現するガラス系を選択し、波長308nmを有するXeClエキシマレーザにより局所加熱処理を実施した。以下に主要な成果を記す。 1 パルスレーザの照射パルス数の増大に伴い、ナノ粒子の直径は漸増し、およそ30J/cm^2以上のエネルギーにおいて直径が飽和する変化傾向を見出した。またその時、単位面積あたりのナノ粒子数は対照的に漸減する変化傾向を示すことが分かった。これら2つのパラメータについて、ナノ粒子による表面積占有率を考慮すると、直径の飽和値は、すなわち占有率が限りなく100%に近づくことにより決定されると考えられる。次に、パルス発振周波数を1Hzから10Hzへ増大させたところ、初期のナノ粒子直径は小さくなり、かつ飽和値も低減した。この事実は、周波数の増大により結晶核の数が増大し、成長に伴い直径の飽和直が低減するという現象を示唆している。つまりパルスレーザによる結晶化は、通常の均一熱処理による結晶化とはその核形成と結晶成長のメカニズムが大きく異なり、温度の周期的な変化、いわゆるON-OFF繰り返し加熱により、核形成がより支配的に起こる結晶化挙動を誘起していると結論付けられる。レーザ加熱によるナノ結晶粒子形成の機構について、その一端を初めて明らかにした。 2 基板に対して加熱補助を施すことにより、レーザ照射による加熱をより安定に実施することが可能となり、基板加熱のない場合に比べて、ナノ粒子直径のばらつき(偏差)を約1/5に低減することが出来た。ナノフォトニクス回路を実現する、新しい均一ナノ粒子形成法として実用的な手法の開発に成功した。
|