研究概要 |
本研究では、TiO_2や類似の金属酸化物からなる光触媒について、太陽光水分解および有害有機物質の光分解の高効率化を目的として、表面光反応の機構の解明ならびに新規の高活性金属酸化物の開拓の面から研究を行った。まず、n-TiO_2(ルチル)単結晶(100)および(110)面について、HFエッチングと550℃アニールの方法により原子レベルで平坦な表面を作製することに成功し、これを用いて、フラットバンド電位(U_<FB>)や水の光酸化反応の前駆体(surface-trapped hole, s.t.h.)から発するフォトルミネッセンス(PL)に顕著な面差が現れることを世界で初めて明らかにした。また原子レベルで平坦化したTiO_2表面上で水の光分解反応を進行させると、(100)、(110)面のどちらにおいても、表面構造に原子レベルの乱れが生じ、これに伴ってPL強度が減少し、しかもこの減少が照射光強度を高くするほど速くなることを明らかにした。これらの結果はすべて、我々がこれまでに提案してきた「TiO_2上の水の光酸化反応は表面捕捉正孔(Lewis acid)に対する水(Lewis base)の求核的攻撃」によって開始されるという新しい機構によって合理的に説明され、この機構を強く支持した。この成功を踏まえて、NドープTiO_2やTaONなどの可視光応答性の含窒素金属酸化物上での水の光酸化の機構を調べ、これらの反応もTiO_2と同じ機構で進むことを明らかにした。さらに、可視光応答性の新規の金属酸化物光触媒の開拓についても研究を進め、BiMVO_6(M=Zn_2,Cu_2, or Ti)で表される複合金属酸化物が従来から高活性といわれているBiVO_4などより高い活性を示すことを見出した。
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