研究課題/領域番号 |
16350115
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
矢澤 哲夫 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50347522)
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研究分担者 |
遊佐 真一 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00301432)
神 哲郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 研究員 (30357248)
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キーワード | 多孔質ガラス / 分相 / 分離膜 / 有機無機ナノハイブリッド / 刺激応答性 / pH応答性 / 温度応答性 / 光応答性 |
研究概要 |
刺激応答性有機-無機ハイブリッド創成のため、刺激応答性の有機物である刺激応答性ポリマーの精密合成と刺激応答挙動に関する研究を行った。その結果、ポリマの精密合成の方法として、さまざまな官能基を含むモノマーをリビング的に重合可能な可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)型ラジカル重合法を用いることで、pH、イオン強度、温度などに応答性を示すポリマーの精密合成が可能であることを確認した。以上の知見をもとにして、多孔質ガラス表面上での刺激応答性ポリマーのグラフト重合を行い、刺激応答性有機-無機ハイブリッド膜を作成した。 さらに光応答性化合物の光異性化に着目して、多孔質ガラス膜表面および細孔内にアゾベンゼン誘導体を導入し照射光のスイッチングにより気体流量を制御する材料を設計、創製した。多孔質ガラス表面にあるシラノール基(Si-OH)を3-アミノプロピルジメチルクロロシランで改質した後、アゾベンゼン誘導体(11-[4-(4'ヘクシルフェニルアゾ)フェノキシ]ウンデカン酸、6AzCOOH)のカルボン酸をアミノ基との脱水縮合反応によって導入することで光異性化に伴う気体透過性制御を試みた。窒素ならびにヘリウムを当該膜によって透過する際、刺激光の照射あるいは非照射によって透過速度が変化することがわかった。一方で透過性の光照射による変化率は数%程度であり、これは、多孔質ガラス表面におけるアゾベンゼン誘導体のアミノ基との反応率10%という低い改質率が原因と考えられ、数段階を経由する多孔質ガラス表面の改質方法では気体透過を制御するほどのアゾ基を導入することは困難であるという結論が導かれた。そこで金微粒子と極めて反応性の高いチオールを有するアゾベンゼン(HS-(CH2)2-COHN-ph-N=N-ph)を合成し、これを金修飾多孔質ガラス表面へ導入した。結果、改質率は20%まで増加した。この膜を用いて、刺激光の照射あるいは非照射による窒素の透過速度の変化を検討した。透過性の変化率は5-6%程度であり、若干の変化率の上昇が確認できた。このことから、アゾベンゼンの末端基に長鎖のアルキル基を導入できれば、さらに大きな変化率を得られることを示唆するものと考えられる。
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