研究課題
刺激応答性有機-無機ハイブリッド創成のため、刺激応答性の有機物である刺激応答性ポリマーの精密合成と刺激応答挙動に関する研究を行った。その結果、ポリマの精密合成の方法として、さまざまな官能基を含むモノマーをリビング的に重合可能な可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)型ラジカル重合法を用いることで、pH、イオン強度、温度などに応答性を示すポリマーの精密合成が可能であことを確認した。以上の知見をもとにして、多孔質ガラス表面上での刺激応答性ポリマーのグラフト重合を行い、刺激応答性有機-無機ハイブリッド膜を作成した。多孔質ガラスの表面に塩化金酸の還元によって金微粒子をコーティングし、金微粒子と極めて反応性の高いチオールを有するアゾベンゼン(HS-(CH2)2-COHN-ph-N=N-ph)を合成し、これを金修飾多孔質ガラス表面へ導入した。結果、11-[4-[(4'-ヘクシルフェニル)アゾ]フェノキシ]ウンデカン酸(6Az10COOH)で改質した場合、多孔質ガラス表面の改質量は多孔質ガラス1g当たり0.2mmolであった。一方で本方法によるチオール基アゾベンゼン誘導体の改質量は0.4mmolまで増大した。さらに、6Az10COOH改質膜による窒素透過特性では、紫外線の照射非照射によって完全な気体透過のON-OFFが実現できなかったが、本方法で初めて刺激光照射非照射によって気体透過ON-OFFのスイッチングが実現できた。また、多孔質ガラス表面に連鎖移動剤を化学結合により導入した。この多孔質ガラスを使用して、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)型のリビングラジカル重合を行うことで、温度に応答してコンホメーションの大きく変化するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)のグラフトを行った。PNIPAMをグラフトできたことを熱重量分析により確認した。PNIPAMをグラフトした多孔質ガラスは25℃で細孔のゲートが水和したポリマー鎖により封鎖され、物質の透過を抑制するが、40℃でポリマー鎖が脱水和を起こして収縮するため、細孔ゲートが開き、物質の透過が可能となることを、ベンジルアルコールを使用した水中での透過実験により確認した。
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