研究概要 |
本研究は数個のロイシンからなるペプチドを部分構造に有する両親媒性分子を用い,水素結合とロイシン側鎖間の噛み合い(ロイシンファスナー)で構造化された柔軟なフィルムを作成するとともにその構造・物性解析を研究目的としている。平成16年度の具体的な研究計画は,1 分子構造と超分子フィルムの力学物性の関係,2 柔軟な超分子フィルムの精密構造解析,3 柔軟な超分子フィルムの作成条件と成形加工の3項目であった。1については現在検討中である。2については,研究計画どおり気水界面単分子膜を作成し,ロイシンファスナーに起因すると考えられる一時的表面圧増加の前後でFT-IRスペクトルを測定するとともに,申請備品として購入した原子間力顕微鏡(AFM)で表面形態を比較した。その結果,圧力増加後のFT-IRスペクトルには,圧力増加前後で共通して水素結合形成が観察されたほか,ロイシン側鎖のメチル基が運動を拘束されることに起因する大きな高波数シフトを観察した。すなわち,用いたロイシン型両親媒性分子は,水面上でまず水素結合による会合体を形成し,表面圧を増加させればこれらがロイシンファスナーで連鎖するという階層構造化を起こしている。AFMによる表面形態観察においても圧力増加後の形態は増加前よりも巨大な平板上形態に変化していた。以上の結果は,ロイシンファスナーの形成を定量的に証明したのみならず,非共有結合性高分子あるいは超分子ポリマー作成の新しい作成法につながる点できわめて重要だと考えている。3については,結晶化しやすいヘキサロイシン誘導体を結晶化能に乏しいオリゴエーテル型酢酸と結合することで結晶化を抑制し,強度の高い柔軟なフィルムにが作成できることを明らかにした。また,この際,申請書にも記載したような油圧プレスが塑性加工法としてきわめて有効な手段であることを明確にした。
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