研究課題
基盤研究(B)
従来、高分子ゲルは軟らかいもの、もろい材料として主に高吸水性樹脂、保水剤などを中心とした用途開発が成されてきた。しかし、近年、ゲルの「軟らかくもろい」という観念を打ち破る高強度材料や高延伸性材料としてのゲルの開発が相次いで行われている。これは、複数のゲルによる複合化や無機--有機コンポジット、可動架橋点ゲルなどに象徴されるように異なる性質の材料の複合化や全く新奇な概念に基づいて造られたものが多い。こうした材料を新規結合相関系高分子と名付け、小角中性子散乱と動的光散乱を駆使し、微視的構造解析の観点から新規結合相関系高分子の構造解析、結合相関や相互作用の研究を行うことで、高性能発現のメカニズムの解明、さらなる高性能材料の設計指針を得ることを目的として研究を行った。その対象は(1)クレイと有機高分子鎖から成るナノコンポジット(NC)ハイドロゲル、(2)環状架橋点を持つ環動ゲル、(3)感熱性ゲル、(4)両親媒性高分子ゲル、(5)オイルゲル化剤と有機溶媒からなるオイルゲルシステム、などである。こうした全く異なるタイプの高分子ゲルについて、幅広い時空間スケールの構造解析とダイナミクス研究、それに平行して行う力学、レオロジー、熱測定という、横断的、縦断的な物性研究により、ゲルの普遍性と高性能発現の個別性を分子論の立場から厳密に分類・整理した。そして、得られたデータを元に高性能高分子ゲルの分子間相互作用とそれによる高次構造の多様性についての推察・議論を行った。その結果、NCゲルの高延伸性の説明、環動ゲルのスライディングモードの確認、感熱性ゲルの高圧下での相転移などに関して多くの有用な知見が得られた。
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