研究概要 |
CalbindinD9Kのカルシュウム結合部位14残基を機能部位とし、(Ala)_<12>を基盤として両側から挟んだ、合わせて38残基からなるモデル化合物を固相法で合成、蟻酸処理を行った後、固体NMRを用いて精密な構造評価を行った。 さらに、基盤部位を(Ala-Gly)_6,(Ala-Gly-Gly)_4,(Ala-Gly-Gly-Gly)_3と変化させたモデル化合物についても合成を行い、構造を比較した。その際、機能部位の構造情報を選択的に得るため,機能部位の安定同位体ラベル化を行った。 (Ala)_<12>および(Ala-Gly)_6を基盤部位とした場合、規則的なβ-シート構造を形成すること、カルシュウム結合部位は、CalbindinD9K中と同様の構造をとり、カルシュウムと強く結合することを確認した。基盤部位を同様に4種選び、機能部位をアコヤ貝真珠層に存在するカルシュウム結合部位に変えた場合についても、モデル化合物を固相法で合成、構造とカルシュウム結合性を検討した。 一方、より分子量の大きな試料は、遺伝子組み換え法を用いて合成を行い、CalbindinD9Kのカルシュウム結合部位を家蚕絹の結晶部分、Ala-Gly-Ser-Gly-Ala-Glyで挟んだ配列を8回繰り返した絹様タンパク質ならびに([(Ala-Gly)_3/(Ala)_6]Asp[(Gly-Ala)_3/(Ala)_6])Ser)_<16>の配列を有する絹様タンパク質を作成することに成功した。収量は、約40mg/lであった。蟻酸処理によって規則的なβ-シート構造を形成することを確認した。 さらに、現在、ラメラ構造の発現と関連した詳細な固体MR構造解析とSEM観察、生体適合性を検討するためのカルシュウム結合性、石灰化実験、ウサギ大腿骨への移植実験を行っている。最終的に、絹をベースとした優れた新規骨補填材料、歯科用材料を開発するための指針を得る予定である。 これらの成果は関連学会で発表するとともに、国際関連誌に投稿予定である。また、関連した、基盤としての絹の構造と生体材料への応用に関する研究報告もまとめた。
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