研究課題
基盤研究(B)
コロイド結晶とは、粒径が約50nmから300nm程度の単分散コロイド粒子を、極性溶媒中で十分脱塩したときに形成される規則構造である。このコロイド結晶は、コロイド粒子表面の電気二重層による静電的反発と、粒子のBrown運動とによって発現する。コロイド結晶を構成するコロイド粒子の面間隔に対応する光を結晶外部から入射すると、その光はBragg反射により結晶内部には入り込めない。しかし逆に、結晶の内側からの発光は結晶内部に閉じ込められる。本研究ではこの光閉じ込め効果を用い、光緩和過程における高効率エネルギー移動系を構築した。具体的な成果としては以下の通りである。1.コロイド分散液滴を乾燥させることで、コロイド粒子の規則配列構造を簡便に形成できることを明らかとした。この規則構造形成においては、液滴でのマランゴニ対流の寄与が大きいことが無重力実験より示された。2.剪断力による結晶破壊を防ぎ実用的な光学素子を実現する目的で、コロイド結晶のゲル固定化を実施した。さらに、このゲル固定化コロイド結晶が電気光学効果を発現することが示された。3.色素を分散したコロイド結晶において、色素蛍光の波長と結晶のBraggピークを一致させることで、蛍光の一部が結晶内に閉じ込められることを定量的に評価した。光学セル壁面近くに発現した不均一核形成による結晶面が、この光閉じ込め効果に大きく寄与していることが示された。4.コロイド結晶を発現したコロイド分散系に電子エネルギー供与体および受容体となる2種類の色素を共存させ、前者のみを光励起することでこれからの発光をコロイド結晶内に閉じ込め、後者へのエネルギー移動効率を高めることに成功した。植物の光合成中心におけるエネルギー移動が、モデル的に実現されたものと考える。
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