研究概要 |
有機太陽電池や有機ELデバイスなど機能性有機材料の開発が盛んに行われている。しかし、これらはほとんどの場合非晶性であり、X線回折法はほとんど利用できないため、非晶状態でも精密な構造解析が可能である二次元二量子遷移NMR法(2D DOQSY)を開発した。この方法を用い、カルボニル炭素を10%エンリッチした非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)について、フェニレン環の重心間距離、相互の配向状態を表すオイラー角を精密に決定できること、すなわち、等方成分が約45%含まれていること、異方成分のフェニレン環の配向を表すオイラー角ψは0°を中心にした指数減衰的な分布をしているが、φは約35°を中心としてガウス分布をしていることを明らかにした。この方法をベースにして、有機ELデバイスに利用されている電荷輸送材料について、その局所構造・ダイナミックスと電荷輸送性能との関係を明らかにするため^<13>C,^<15>N,^2H NMRおよび量子化学計算による検討を行い、これらの方法が極めて有効なことを示した。 また、非晶材料を含む固体材料のNMR共鳴線の帰属法を開発するためhomo-nuclear cross polarization(HNCP)検討し、比較的高速のMAS下では、^<13>C-^<13>C J-couplingが利用できることを明らかにした。液晶ディスプレイなどに使用されている偏光膜はポリビニルアルコール(PVA)とヨウ素の錯体で構成されているが、その錯体の構造を固体^<13>C NMRにより初めて明らかにし、hexagonal aggregation modelを提出した。さらに、酢酸菌の産生するバクテリアセルロースの生合成直後の基本構造体、サブエレメンタリーフィブリル(SEF)の構造を固体^<13>C NMRにより初めて明らかにし、結晶化を始めとするこの系の階層構造の形成過程に対する構造モデルを提出した。
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