糖質高分子の中間相(液晶・ゲル)の構造とそれに基づく性質(メゾスコピック構造特性)をイオングループ等の介在によって制御すると共に、電場・磁場などの外部刺激に対して巨視的性質が可逆応答する動的機能材料の創出を目的とした。下記の2項目について新たな知見を得た。 1.糖質高分子の液晶相構造制御と動的機能の創成に関して (1)1-アルキル-3-メチルイミダゾリウム塩を共存させたヒドロキシプロピルセルロース(HPC)/水系液晶について、イミダゾリウム1位(N位)に結合するアルキル鎖の鎖長やその末端置換基の種類に応じて、コレステリックピッチや相分離温度(曇点)が鋭敏にシフトすること、および、外部電場の印加によって液晶の選択反射色と白濁度が変化することを見出した。一方、HPCおよびヒドロキシエチルセルロース(HEC)の側鎖末端または未置換の水酸基よりアルキル鎖を介してN-メチルイミダゾリウム塩が導入された新規イオン性セルロース誘導体を合成し、熱転移挙動を評価した。 (2)キチンの均一系アシル化反応によって3O位および6O位に長鎖アルキルエステルが導入されたキチンジエステル(C_n-AC;側鎖炭素長n=4-20)を合成した。C_n-ACは、ネマチック的に配列したキチン主鎖を隔壁層として、アシル側鎖がスメクチック的に層間を充填した二重のmesomorphic構造をとり、側鎖の急速かつ特異的なガラス性エンタルピー緩和を示すことなどが判明した。 2.糖質高分子のゲル構造制御と動的機能の創成に関して ι-およびκ-カラギーナンをゲルマトリックスとして、鉄イオンの高含率インターカレーションとin situでの酸化鉄合成によって磁性ナノ微粒子を化学充填する方法を確立した。得られた磁性複合体の室温超磁性を確認すると共に、ゲル化試料の内部形態を明らかにした。一方、多糖ゲル含浸溶媒としてのビニルモノマーの塊状重合を利用して、アルギン酸/ビニルポリマー系IPN(相互侵入ネットワーク)をマトリックスとした磁性ナノ複合体の予備調製実験にも成功した。
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