糖質高分子の中間相(液晶・ゲル)の構造とそれに基づく性質(メゾスコピック構造特性)をイオングループ等の介在によって制御すると共に、電場・磁場などの外部刺激に対して巨視的性質が可逆応答する動的機能材料の創出を目的とした。得られた成果は以下の通りである。 1.糖質高分子の液晶相構造制御と動的機能の創成に関して (1)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびエチルセルロース(EC)を出発に、それらの側鎖末端あるいはピラノース環上の水酸基よりアルキル鎖を介してN-メチルイミダゾリウム塩が導入された、新規イオン性セルロース誘導体を合成した。特に対アニオンが臭素の各誘導体はリオトロピック液晶のみならずサーモトロピック液晶も形成することが判明した。また、HPC/1-アルキル-3-メチルイミダゾリウム塩/水系溶液の相図を補完すると共に、電場印加による液晶光学機能の制御法を精密化した。 (2)昨年度に合成したキチンのジアルキルエステル(Cn-AC;側鎖炭素長n=16-20)について、液晶ガラスのエンタルピー緩和を定量解析し、コレステロール系脂質錯体の形成する液晶ガラスの同緩和挙動と比較検討を行った。スメクチック的に凝集したCn-ACの側鎖液晶ガラス相が極めて低い活性化エネルギーで急速に緩和することを改めて明確化した。 2.糖質高分子のゲル構造制御と動的機能の創成に関して 電解質多糖(アルギン酸、カラギーナン)のゲルの脆さを解消するため、含浸ビニルモノマーの重合架橋によってIPN(相互侵入網目)化し、そのネットワーク中で鉄酸化物をin situ合成することに成功した。得られた複合体は室温超常磁性を示すが、その際の飽和磁化はカラギーナン単独を母剤にした場合と比べて極めて小さい。なお高分子の複合化に関連して、糖質高分子/ビニルポリマーの相溶性について熱分析データの集積を行った。
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