研究概要 |
本研究は、高分子ブレンドやブロックコポリマーの相分離構造を利用したセラミックス粒子およびナノカーボンの分散制御を目的としている。本年度は高分子ブレンド溶融物中のジルコニア(球状、平均直径270nm)および気相成長炭素繊維(VGCF、直径150nm、アスペクト比67-130)の分散状態と動的粘弾性挙動の相関を検討した。分散状態は急速冷却試料について、主として購入したリアルサーフェスビュー顕微鏡(SEM)を用いて調べた。共連続構造をもつポリスチレン(PS)/ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)ブレンド中でジルコニアはPBMA相に偏在し、11vol%までは分散し数個以内の2次粒子にとどまるが、2lvol%以上では分岐構造が出現する。一方、共連続構造をもつPS/ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ブレンド中ではいずれの相中でもジルコニアが凝集し、4.4vol%でも分岐構造が出現する。分岐構造が出現すると、低周波数側の貯蔵弾性率G'に顕著な第二平坦部が出現する。共連続構造をもつポリプロピレン(PP)/高密度ポリエチレン(HDPE)中でVGCFはHDPE相に偏在する。VGCFはネットワーク状に凝集するが、200℃,57minの試料調製および180℃,1h後の条件では1.4vlo%がパーコレーションしきい値となることを、動的粘弾性および導電性の測定から見出した。PMMA/HDPEの97/3ブレンド中では、VGCFの末端部がHDPE相になじみ、VGCFが連結してパーコレートする。上述と同条件の試料調製および180℃,1h後の条件では1.7vlo%がしきい値となった。しきい値でのフラクタル次元はそれぞれ2.23と2.04であり、PS中の低分子ゲル化剤のしきい値におけるフラクタル次元2.4-2.6よりずっと小さくなった。
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