研究課題
本研究は、高分子の相分離構造を利用した微粒子の分散制御を目的としている。本年度はジルコニア(球状、平均半径r=135nm)、銀(球状、r=1.33μm)、気相成長カーボンファイバー(VGCF、r=75nm、アスペクト比67-130)に加えてアセチレンブラック(AB、r=10nm)の分散状態と粘弾性挙動の相関を検討した。さらにVGCFとABについては分散状態と導電性の相関を調べた。全て共連続構造をとる3種のブレンド、ポリスチレン(PS)/ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)、PS/ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリプロピレン(PP)/高密度ポリエチレン(HDPE)を作成し、各ブレンドにおける微粒子の分散と粘弾性挙動を調べた。低いガラス転移温度Tgをもつ柔軟なPBMA鎖の吸着により、ジルコニアはPBMA相に偏在して分散するが、PS、PMMA相にはなじまずその相の中で凝集する。銀粒子は電気陰性度の高い酸素原子を含むPMMAやPBMAになじむという予想と正反対にPS相に偏在したが、PS相中で凝集も起こり数個から10個程度の2次粒子を形成した。貯蔵弾性率G'は、粒子の数珠状連結や分岐により顕著に増大した。VGCFやABなどのナノカーボンは高分子との界面エネルギーよりも吸着によるエントロピー損の影響が大きく、Tgが低く屈曲性の高いHDPE相に最もなじんだ。PP/HDPEブレンドではVGCFはHDPE相に完全に偏在し、界面付近のVGCFは界面と平行になって軸方向に連結しやすくなる。その結果、HDPEやPP単体に比べ、PP/HDPEブレンド中では同じVGCFの添加量で、G'がずっと高い第2平坦部を示し導電性も高くなった。一次粒子が球状のABでは繊維状のVGCFと比較して、導電性から判断されるパーコレーションしきい値が、3-6倍程度大きくなった。
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