研究概要 |
タンパク質結晶表面を非接触・非破壊でその場観察するためにレーザー共焦点微分干渉顕微鏡を立ち上げた.そして,本顕微鏡と近接場1分子観察蛍光顕微鏡を用いて,タンパク質結晶の成長中に格子欠陥が発生する機構を明らかにするために,タンパク質結晶中の格子欠陥,結晶表面上の単位成長ステップおよびタンパク質1分子をその場観察し,下記の成果を得た. 1)タンパク質結晶中の格子欠陥のその場観察:タンパク質結晶を溶解させることなく,結晶の成長中に,結晶に取り込まれた転位を非破壊・非接触で観察する技術はこれまでに報告されていない.我々は,本研究課題で立ち上げたレーザー共焦点微分干渉顕微鏡を用いることで,リゾチーム正方晶系結晶中の,光軸に垂直方向に発達した転位をその場観察できることを見いだした. 2)流れ場下での成長ステップのその場観察:リゾチーム正方晶系結晶に一方向から流速20-550μm/sの強制流を与え,結晶表面の成長ステップの挙動をレーザー共焦点微分干渉顕微鏡を用いてその場観察した.純度が99.99%と98.5%のリゾチーム試料を用いた観察結果の比較より,流れ場下では顕著にステップがバンチングすること,およびその原因がバルク溶液から結晶表面上への不純物の輸送が流れによって促進されることにあることを見いだした. 3)結晶表面上での蛍光化リゾチームの1分子その場観察:リゾチーム正方晶系結晶表面近傍での蛍光ラベル化リゾチーム分子の拡散運動をその場観察した.拡散運動を解析したところ,結晶表面近傍ではバルク溶液中に比べて拡散係数が4桁小さいこと,および結晶方位に応じて拡散係数に異方性が見られることを初めて明らかにした.また,結晶表面上への蛍光ラベル化リゾチーム分子の吸着過程をその場観察したところ,蛍光分子は結晶表面上のテラスではなく,主にステップで吸着することを見いだした.
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