研究概要 |
レーザー共焦点微分干渉顕微鏡,近接場1分子観察蛍光顕微鏡,および新たに作製したレーザー光散乱トモグラフィー顕微鏡を用いて,タンパク質結晶表面上の単位成長ステップ・個々のタンパク質1分子,および結晶中の格子欠陥をその場観察し,下記の成果を得た. 1.タンパク質結晶中での転位の発生メカニズム:リゾチーム正方晶系結晶に一方向から強制流れを与え,結晶表面の成長ステップの挙動をその場観察した.その結果,結晶表面に付着した微結晶が母結晶の成長に伴い母結晶中へ固相インクルージョンとして取り込まれると,その周囲より歪みを緩和するべく多くの転位が発生し,インクルージョン直上に渦巻成長丘が発達することを見出した. 2.タンパク質結晶表面上での不純物タンパク質の吸着メカニズム:リゾチームおよび共有結合性リゾチーム・ダイマーを蛍光ラベル化し,リゾチーム結晶表面への吸着過程をその場観察した.その結果,蛍光ラベル化リゾチームは結晶表面のステップに選択的に吸着するが,蛍光ラベル化リゾチーム・ダイマーはテラスにランダムに吸着すること,および吸着機構に応じてステップ前進速度が異なることを見出した. 3.タンパク質結晶中でのマイクロ欠陥のその場観察:新たに作製したレーザー光散乱トモグラフィー装置を照明系とし,レーザー共焦点微分干渉顕微鏡を検出系とする顕微鏡を新たに立ち上げ,観察実験を行った.その結果,空孔や不純物粒子を起源とするマイクロ欠陥と考えられるコントラストを結晶の成長中にその場観察することに初めて成功した. 総括:2年の研究期間内に,結晶表面でのタンパク質分子の表面拡散・吸着・脱離過程を初めて明らかにした.また,流れの主な効果が微結晶と不純物の結晶表面への吸着促進であることを見出すとともに,タンパク質結晶中の主な格子欠陥を結晶成長中にその場観察する技術を確立した.
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