研究課題
本研究は、原子層制御法を用いてIV族半導体結晶中への異種元素原子層の導入をおこない、電子帯変調を調べるとともに共鳴トンネルダイオード等の量子トンネル構造を形成し、電子帯変調による新規半導体物性の創生を行うことを目的とする。本年度はその最終年度として、表面異種原子層が拡散・凝集しないような表面反応制御による原子層ドーピング構造形成とその電気的特性について調べ、si_2H_6ガスによるキャッピングSi成長時のPの表面偏析現象を抑制したP原子層ドープSiエピタキシャル薄膜において、多くのP原子はヘテロ界面付近の厚さ2mm以下の極薄領域に分布し、局所P濃度が3x10^<21>cm^<-3>(原子密度6%)に達する超高濃度ドーピングに成功した。さらに、このP原子層ドープSi薄膜においては、従来知られていた高濃度PドープSiより高いHall移動度を示すことも見いだした。Arプラズマ照射下でのSiH_4反応により実現した高平坦歪緩和Ge上へのナノオーダ高度歪Siエピタキシャル薄膜において、500℃以上の熱処理により歪緩和が生じることを見いだし、ナノメータオーダの高度歪導入IV族半導体ヘテロ構造形成において500℃以下の低温プロセスが不可欠であることを明らかにした。歪Si_<1-x>Ge_x/Siヘテロ構造を用いたp型共鳴トンネルダイオードの試作においては、量子井戸とスペーサの一部に極薄高Ge比率層(x=0.3、3nm厚)を導入することにより、170-190Kの高温域でも負性抵抗特性が発現することを見いだし、IV族半導体負性抵抗デバイスの室温動作実現のために高Ge比率の推進が有効であることを明らかにした。以上のように、電子帯変調による新規半導体物性の創生において重要な成果を得た。
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