研究概要 |
H18年度は本研究で進めてきたワイドギャップ半導体光デバイスの動作劣化の系統的なエージング試験結果、およびミクロ点欠陥の増殖反応をもとに各光デバイス(ZnSe-白色LED, InGaAlN-GaN系青-紫外LED, ZnSSe-PIN光検出素子)の劣化メカニズムの判定とその制御手法の開発を進めた。主要な成果を以下にまとめる: [I]ZnSSe II-VI系ワイドギャップ光デバイス(LED, LD, PIN型光検出素子) (1)順バイアス(キャリア注入)で動作させるLED, LD素子の劣化の要因はp型クラッド層中のミクロ点欠陥の増殖(大部分は電子的刺激による欠陥増殖)によって生じる。p型での欠陥(アクセプター原子であるN原子の複合欠陥)増殖のドライビング・フォースは欠陥が形成する深い欠陥準位でのREDR効果(電子-正孔・非発光再結合促進反応)であり、この電子的刺激と素子中の歪効果がリンクして欠陥の増殖・移動・凝縮が進行し、素子劣化を引き起こす→対策はp型クラッドでのREDR反応の人口的制御(後述):III)で可能。 (2)逆バイアス(高電界下)で動作させるPIN, APD型Photodiodeにおいてミクロ点欠陥は関与しない。この要因は、点欠陥の増殖が全てREDR(少数キャリア注入)反応で生じており、高電界下では欠陥の顕著な増殖・移動は生じないことによる。この幸運は、逆バイアス・高電界動作のワイドギャップ・Photo-voltaic素子の実用化にとって非常に有利となる。 [II]InGaAlN-GaN系LEDおよびPIN-,APD型光検出素子の劣化と制御 GaN系LED(青-白色)の順バイアス動作でのミクロ点欠陥増殖は、ZnSSe系のそれより二桁小さく、数万時間動作でもp-クラッドの劣化は無視できる。GaN系の高輝度LEDのSLOW-MODE劣化は、量子井戸活性層での非発光型点欠陥の増殖が要因となる。欠陥発生のドライビング・フォースはZnSeと同様、REDR効果であることから、その人工的制御が可能である(IIIで記述)。 [III]ワイドギャップ半導体の高輝度LED素子(緑-青-白色)の超・長寿命化技術の開発 欠陥増殖の起源となるREDR反応を人工的に制御する「電流パルス幅制御」を見出し、素子動作の飛躍的な長寿命化(15-40倍の寿命改良:ZnSe-白色LED、InGaAlN-GaN紫外LED)を実際の加速・エージング試験で検証した。本手法は、増殖するミクロ欠陥のキャリア捕獲時間(=再結合レート)以内に電流パルス幅を制御して動作させるもので、輝度低下をさせずにLEDの長寿命化(>数万時間)を実現する新手法である。今後の超・高輝度LEDの動作寿命確保に重要な技術となるものと思われる。
|