研究概要 |
本研究では、ガラス上に於ける高品質トランジスタの実現を目指し、高移動度半導体薄膜の低温形成技術を探索した。 第1年度は、Niを金属触媒とした低温多結晶Siの形成プロセスを検討した。Ni薄膜を挿入した多層構造(a-Si/Ni/ガラス、a-Ge/a-Si/Ni/ガラス、a-Si/a-Ge/Ni/ガラス、a-Si/a-Ge/a-Si/Ni/ガラス)の結晶成長を考察し、実験した結果、a-Ge層を付加した試料では、付加しない試料に比べ、結晶成長速度が約3倍以上に向上する事が明らかとなった。これは、熱処理初期にNiとa-Ge及びa-Siが三元的に反応する為と考えられる。この手法で形成した多結晶Si膜の結晶性は、レーザアニール等の高温プロセスで形成した半導体薄膜と同程度である事が明らかとなった。 第2年度は、非晶質Si_<1-x>Ge_x(0≦x≦1)薄膜の触媒金属誘起固相成長法に有効な触媒金属種の探索を行った。成長層の結晶様態及び残留する触媒金属の濃度を比較検討し、共晶反応型の金属(In,Al,Au)よりも化合物反応型の触媒金属(Ni)の方が、Si_<1-x>Ge_x(0≦x≦1)の固相成長触媒として優れている事を明らかにした。 最終年度は、金属触媒誘起固相成長法(MILC)、及び従来型固相成長法(SPC)により、多結晶Si、及びGe薄膜を形成し、その格子歪みを評価すると共に、薄膜トランジスタ(TFT)の試作を行った。MILC法により形成した多結晶Siを用いて試作したTFTの動作特性を解析した結果、93cm^2/V・sの移動度を有するnチャネル動作が確認できた。この値は、SPC法により形成した多結晶Siを用いて基板上に試作したTFTの移動度(2cm^2/V・s)より非常に大きな値であった。更に、キャリヤ移動度の向上を目指し、歪み多結晶Geの形成とデバイス応用を検討した。その結果、SPC法を用いる事により、伸張歪み(約1.5%)の印加された多結晶Ge薄膜を実現した。試作したTFTの動作特性を解析した結果、多結晶Siと比べて非常に大きなキャリヤ移動度(140cm^2/V・s)が得られた。 以上は、システムインディスプレイを実現する為の基盤技術として、今後の展開が期待される成果である。
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