高い輝度の放射光の特性を利用した5μmΦのマイクロビームにより微小構造スペクトロスコピーを伴い、結晶内部の状態を高分解能可視化する散乱トポグラフ観察が可能となった。今年度は、3カ年計画初年度で、<マイクロホールコリメーター(MHC)のシミレーション>、<マイクロホールコリメーターの製作>、<SPring-8実験(SP-8-BL28ハッチにおいて、研究室で設計した21軸マルチチャンネルイメージンゴニオメータおよび関係の付属装置一式を使用)>、および、<単結晶素子の育成>を実施した。 まず最初に、MHCによってビームの微細化を達成できるか、種々のケースの計算機シミュレーションを行い、その予測を立てた。このシミレーションをもとに、マイクロビームの形成実験を成功裏に達成した。 さらに、結晶評価の新たなツールと成り得るマイクロビームを用いた結晶内部のペンデルビート現象の測定の試みを行った。動力学的回折理論によって導出される理論式より、試料の厚さを一定とし波長を変化させることで理論式中のWaller積分項が変化しペンデルビートを与える。これは白色SRマイクロビームを用い平板結晶と半導体検出器の位置関係を、それぞれブラッグ回折角θBとその二倍の2θBの状態のまま連続的に変化させることで測定できた。 測定の結果、直径5μmのマイクロビームから動力学的回折が生じ、波長変化に対応した積分強度のペンデルビート現象が明瞭に観察された。また散乱トポグラフィーで試料を観察した範囲において測定箇所を変えてエネルギーペンデルビート測定を行い、原子散乱因子の計測をした。ついで、ペンデルビートの各測定値を比較した結果、結晶の観察範囲において結晶構造の乱れの少ない状態であることを見出した。
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