本研究では次世代MOSFETデバイスの極薄ゲート酸化膜形成の極限制御を目的として、格子歪みSi表面での酸化反応ダイナミクスをリアルタイムモニタリングすることにより、Si熱酸化の反応モデルの構築と、プロセス制御技術の指針を確立する研究を進めている。 平成16年度は本研究の初年度に当り、オージェ電子分光と複合化した反射高速電子回折、そして、紫外線光電子分光を備えた複合表面解析装置の調整と、本年度尾予算で購入したRHEEDイメージ解析システムとスパッタイオン銃を取り付けて装置改造を行った。 1.Si(001)2×1表面第一酸化膜形成において、低温のラングミュア型吸着領域では酸化温度を上げるにつれ、その後の第二酸化膜形成速度が低下し、高温の二次元島成長領域では第二酸化膜形成が自己停止することを観察した。このように温度上昇にも関わらず第二酸化膜形成速度が低下することは、これまでの反応モデルでは説明できず、第一層酸化膜形成における格子歪みが重要な役割を担っていることを明らかにした。 2.第一酸化膜形成のラングミュア型吸着において、2×1/1×2分域比と酸化膜被覆率の相関から、酸化の体積膨張に伴うSi原子放出過程を定量的に解析し、Si原子放出が酸化膜被覆率に比例すること、そして、表面酸化終了において約0.4MLのSi原子が放出されることを明らかにした。 3.第二層酸化膜形成速度と、酸化膜分解におけるボイド核発生速度の相関から、SiO_2/Si界面での酸化膜成長と分解が同じ律速反応で支配されていることを観察し、格子歪みによるSi原子放出に基づく界面反応モデルを用いて説明できることを明らかにした。 以上、本年度はSi(001)2×1表面の第一と第二酸化膜形成において、格子歪みとそれによるSi原子放出が重要な役割を担っていることを明らかにした。
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