研究課題
Si(111)-5x2-Au構造については、これまでの我々のX線回折実験の研究により、その表面を数十オングストロームのSiでキャップした埋もれた界面では、その長周期構造が保たれていること、および、その構造は、Erwinが第一原理計算により提唱している構造モデルが最も確からしいことが分かった。本年度は、超高真空下においてSi(111)-5x2-Au表面構造そのものの構造をX線回折法により調べ、その構造が界面の場合と同じくErwinモデルで説明できるか否かに焦点を絞った研究を行った。測定には、高エネルギー研PF-15B2に設置されている6軸表面X線回折装置を用いた。まず、表面に平行な面に投影した面内2次元構造を求めるために微小角入射X線回折の実験を行った。34個の独立な回折スポットの積分回折強度が観測された。界面の場合と同様に、Marks-Plassモデル,Riikonenモデル,Erwinモデルの3つについて、最小自乗法によりモデルの最適化を行い、それぞれのモデルの妥当性を評価した。それぞれのモデルについて5x2単位格子当たり、Auは4原子、Siについては最大6原子までとりいれた。3つのモデルの中では、ErwinモデルだけがAu原子だけのモデルから順次Si原子を加えていくと信頼度因子が改善された。さらに、パターソン図を実験データから求めると、主なピークの位置は、Erwinモデルにおける原子間ベクトルでほぼ説明できることが分かった。次に、表面に垂直な方向の構造の情報を得るために、4つの分数次の逆格子ロッドに沿って積分回折強度を測定した。測定された範囲では顕著な振動的な振る舞い見られなかった。このことから、基板Si結晶の格子歪みは小さいことも分かった。
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Surf. Sci. 601
ページ: 1048-1053
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