研究概要 |
本年度は下記の3点を中心とした研究成果を得た. 1:酸化膜中のボロン拡散 ボロン不純物の酸化膜中の拡散に対するボロン濃度の効果を詳細に調べ,特にボロン濃度が高くなった場合に酸化膜中に生じる歪の拡散に対する影響を明らかにすることに成功した.実験結果を歪の効果を含めた拡散モデルで定量的に記述することに成功した. 2:熱酸化による酸化膜形成機構の解明 次世代絶縁膜として期待されるhigh-k膜とSiの間には酸化膜または酸化チッ化膜が含まれる.この酸化膜・酸化チッ化膜のhigh-k膜に対する影響を明らかにするために,極薄酸化膜における酸化過程を同位体をマーカーとしたRBSとSIMS測定によって明らかにした.ここでは,酸化中に酸化膨シリコン界面からシリコン原子が酸化膜中に放出することを実験により検知することに初めて成功した. 3:シリコン中の自己拡散係数の精密測定と空孔拡散機構の発見 酸化膜中のシリコン点欠陥の挙動を理解するためには,隣接するシリコン中の,点欠陥の挙動を的確に理解することが重要であることが,これまでの本研究から明らかにされた.そこで,今年度はシリコン中のシリコン自己拡散の解明を行い,特に実験において初めて得られた低温領域(900℃以下)において,自己拡散の活性化エネルギーが顕著に変化する現象を観測した.解析の結果,これまでの格子間シリコン原子による拡散とは異なり,空孔拡散による自己拡散であることが明らかにされた.
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