本研究によって、紫外から可視までの広い範囲で波長可変化したプローブが使用可能なマルチプレックス赤外可視和周波発生(SFG)分光装置を開発した。開発は、広島大学が現有する可視光波長可変マルチプレックスSFG分光装置を拡張することによって行った。 作製したシステムの概要:光源部分に関しては、光パラメトリック増幅器(OPA)の後に非線形結晶を設置し、OPAのシグナル出力の基本波と倍波の利用によって、波長範囲で800-470nmと400-235nmのプローブが使用可能となった。 分光部分の拡張としては、低分散なプリズム分光器の迷光除去用フィルター分光器としての利用を新しく試みた。性能評価の結果、プリズム分光器によって迷光が有効に除去できている事が確認された。迷光除去率はプローブ波長に依存する。例えばUV波長289nm、IRプローブ波数1600cm^<-1>の場合、迷光除去率は約99.96%と見積もられた。 試験測定:電子共鳴条件下でのSFGスペクトル、即ち電子振動二重共鳴SFGスペクトルの測定を実行した。試料として、金基板上のp-mercaptobenzoic acid(COOHC_6H_4SH)、p-nitrobenzenethiol(NO_2C_6H_4SH)の自己組織化膜を選んだ。この二種の分子は、ベンゼン環を有しているので300nm以下の紫外領域に電子吸収をもち、紫外プローブを使用によってSFG信号の共鳴が期待される試料である。 測定は、289nmと334nmの二種類の波長で行った。SFG信号の波長が試料の溶液の電子吸収のピーク波長に近い場合、強度の大きいSFG信号が得られ、SFG信号が電子共鳴によって増強していることが確認された。
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