【研究目的】本研究は次の三つの原理に基づく。【1】ナノ物質寸法に依存して共鳴的に近接場光を吸収させ、堆積と脱離との釣り合いにより寸法精度の高いナノ寸法物質を形成。【2】基板に微細パターンを予め作りつけて伝搬光を照射し、パターン端部に近接場光を発生させる。これによりプローブやフォトマスクを不要とする。【3】上記【1】と【2】の組み合わせにより寸法制御されたナノ物質が形成されるが、これを繰り返し、高い寸法および位置精度にてナノ物質配列を自己組織的に形成させる。本研究ではまず【1】の脱離開始の引き金となる機構を解明し、さらに【2】と【3】を実施して大面積一括加工可能なナノ光加工法を開発する。形成される寸法精度の限界、一括加工可能な面積最大値を見極める。さらに加工可能な形状の多様化、適用可能な材料の多様化について検討する。 【研究方法】【1】前年度までにガラス基板上に形成された溝に沿って、均一な粒径を有する金属微粒子の一次元配列に成功している。この結果の理論的な検証を行うために、シミュレーションを用いて、物質の近接場光吸収断面積の値、その光子エネルギー、物質寸法への依存性を明らかにする。【2】(1)の結果を元に、さらなる粒径の微小化と、サイズの異なるナノ寸法物質を隣接して堆積する方法を開発する。これを実現させるために、微細パターンを加工するプロセスの最適化を行う。また、シミュレーションの結果を併用して、球形以外の形状をもつ微粒子や細線の配列、さらには線形配列以外の多様な配列の実現可能性を検討する。【3】「物質寸法依存の近接場光共鳴吸収による脱離」現象は、金属だけに留まらず、あらゆるナノ物質一般に発現すると考えられる。そこで、半導体ナノ微粒子形成の可能性を検討する。【4】以上の結果をもとに寸法と位置の制御精度限界、さらには一括加工可能な面積の最大値限界を推定評価する。さらに、本研究成果を用いて各種ナノフォトニックデバイス(大津が提案済み)を集積加工する方法への応用可能性を検討して研究をまとめる。 【研究成果】電子ビーム描画装置およびドライエッチング装置により作製したパターン化基板に対し、レーザー照射下で半導体微粒子をスパッタリングにより堆積することで、寸法および位置を制御した。堆積には室温で動作可能なナノフォトニックデバイスを目指して、エキシトン結合エネルギーが大きく強い発光強度が得られるGaN微粒子の堆積を行った。これにより、レーザを無照射で堆積した場合(15nm±10nm)と比較して、粒径誤差の小さい微粒子(20nm±5nm)の作製に成功した。このように寸法が制御されたことは、金属微粒子の場合同様、共鳴的に近接場光を吸収する寸法において脱離が発生したためと考えられる。さらには、無照射で堆積した場合には基板の凹凸に不関係でランダムに堆積された微粒子は、レーザ照射下で堆積された場合には折れ曲がって連なる結果が得られた。このような構造は、ナノ寸法光導波路としての応用が期待される。
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