1.【非線形材料の検討】 (1)本研究では、2光子吸収により屈折率回折格子を形成する必要がある。チタンサファイヤーレーザーの2光子エネルギーに吸収帯を持つ、半導体添加光学ガラスにフェムト秒パルス照射実験を行った結果、自己位相変調のしきい値以下の光強度で屈折率回折格子を形成することに成功した。このときに要したレーザーエネルギーは1mJ以下であった。 (2)信号処理等に用いるためには、微小エネルギーで書き込み可能であることが望ましい。色素は吸収断面積が固体材料よりも3桁大きく、また、光解離し易い事からより低い光強度で書き込みできる可能性がある。色素を樹脂中に溶解してフィルムを作成し、これに本年度導入したレーザー発振器より10fsパルスを照射して、初めてサブnJパルスでの2光子誘起回折格子の書き込みに成功した。回折効率の測定から10^<-3>レベルの桁違いに大きな屈折率変化を誘起できることが分かった。 2.【光位相の記録と再生】 (1)GT-干渉計を用いて、振幅位相変調を与えたパルスを生成し、これを信号パルスとして時間記録を行い、回折により群遅延の自動補償ができる事を実証した。 (2)2光子干渉のコントラストを信号パルスの電界の関数として評価し、信号光の10^<-3>以下のゲートパルスエネルギーで100倍以上のパルス圧縮が可能であることを見いだした。 3.【時間反転波の位相評価】 (1)信号光、回折光の位相構造(フーリエ位相)を正確に測定するため、周波数シフト型干渉計を試作し、10fs以下光パルスの瞬時電界を波形の仮定や反復計算なしに測定可能になった。 (2)本測定法により、非線形媒質や書き込み光学系など、周辺光学素子の残留分散を定量評価した。
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