本研究の目的は、光波のコヒーレンス変換によって周波数位相共役波を発生させ、パルス位相ひずみの自動補償や相関演算を実現しようとするものである。本年度は2光子ゲート法によるフェムト秒パルスの位相記録、周波数位相共役波発生法について、記録時間と書き込まれるフリンジのコントラスト比、読み出し時の回折効率に付いて定量的な考察を行った。その結果、数サイクルの超短パルス光の記録再生には従来の固体材料よりも10^3大きな光誘起屈折率が必要であることが分かり、2光子記録記録材料の開発を行った。さらに、実験的に10fsパルスに群遅延分散を与えて記録し、周波数位相共役波を発生させて全光学的時間位相補償を実現した。得られた主な結果を以下に示す。 1.瞬時電界強度を考慮した多光子吸収・多重回折を含むシミュレーションコードを開発した。書き込み時の位相記録コントラストは、記録時間の1/4乗に反比例することが分かり、10^4倍のパルス伸長があっても、ゲートパルス必要なエネルギーでは1%で十分であることが分かった。回折効率は単色光では、フリンジ数の2乗、線形チャープ光では時間幅に比例する。10fs(4サイクルパルス)の再生には屈折率変化0.01が必要である。 2.2光子波長に高い吸収断面積を持つ材料を光解離し、大きな吸収変化によって基本波長の屈折率変化を誘起した。OD=11(400nm)の色素フィルムを用いて800nmの近赤外で必要条件を超える屈折率変化0.03を実現した。 3.10fsパルスに群遅延分散を与えて35fsに伸長し、その周波数位相共役波の発生、位相再生実験を行った。80THzの帯域で全光学位相補償に成功した。
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