研究概要 |
本研究では,透明波長域においても電界誘起屈折率変化が極めて大きいという特長を持つ,5層非対称結合量子井戸(FACQW)の作製およびFACQWを用いた超広波長帯・超高速光変調デバイスの実現を目指した.本年度は以下の成果を得た. (1)GaAs系FACQW Mach-Zehnder光変調器の作製と特性評価 GaAs/AlGaAs多重FACQWをコア層とし,Mach-Zehnder(MZ)干渉計型光変調器を設計・作製し,pin構造を有する素子において半波長電圧1.7V(DC電圧駆動)を達成した.昨年のショットキー電極構造を有する素子に比べ,3割の動作電圧の低減に成功した. (2)InGaAs系FACQWにおける電界誘起屈折率変化特性の理論解析とFACQW構造の最適化 InGaAs/InAlAs FACQWについて,価電子帯構造の非放物線性や高次エネルギー準位等を考慮したより厳密な電界誘起屈折率変化特性の理論予測を行い,昨年度に比べて,より巨大な電界誘起屈折率変化を生じる構造を見出した,また,伸張歪の導入による偏光無依存化についても検討を行った. (3)InGaAs/InAlAs FACQWの作製と評価 InP基板に格子整合したInGaAs/InAlAs FACQWを作製し,その構造的および光学的評価を行った.光吸収電流測定により,その電界吸収変化特性が理論予測と同等の傾向を示すことを実験的に明らかにした. (4)InGaAs系FACQW MZ光変調器の提案と作製 昨年に引き続き,InGaAs/InAlAs多重FACQWをコア層とするMZ光変調器構造の作製技術の確立を行った.多モード干渉素子を用いたコンパクトな1入力-2出力の光変調器や,2入力-2出力光スイッチの設計を行った.また,ウェットエッチング法に多モード干渉素子の試作に成功した.これにより,FACQW光変調器および光スイッチの見通しが立った.
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