研究課題
本年度は、昨年度開発を行ったプロトタイプのレーザー磁気光学顕微鏡で得られた結果を元に、光走査系としてガルバノメータ、ファラデー回転した微弱な光信号の検出に光電子増倍管を備えた走査型レーザー磁気光学顕微鏡システムの構築を行い超伝導硯束量子デバイスを用いた観測実験を行った。この構築したシステムは昨年度構築したプロトタイプシステムとは異なり、ダイナミック評価のためにロックインアンプを使用していないところ、およびガルバノメータを使用して光スキャンニングすることにより高速イメージングができるところに特徴がある。具体的な成果を以下に列挙する。1.MgO基板上に作成した膜厚3000ÅのYBCO薄膜を用いて3×8μmのブリッジと10×8μmのループ、および幅25μmの磁揚制卸電流ラインを持つ超伝導磁束フロー型トランジスタを測定用試料として、制卸電流ラインに100mAの制卸電流(Im)を流ことにより、4つあるループ部分に生成・トラップされる磁束量子束の観察に成功した。2.ダイナミック観察という点では、上記観察時の各画素データはレーザースキャン時にシグナルである光電流をAD変換して随時瞬間的に取り込んだものであり、データの高速取得が可能であることを示している。即ち、レーザー照射位置を固定すればその領域に存在する磁束量子の完全実時間評価が可能である(応答時間:サブナノ秒)。3.また、この超伝導磁束フロー型トランジスタを用いて、制御電流ラインに電流を流した時に発生する磁界の観察に成功した。4.同様にこのデバイスに外部から永久磁石を用いて磁場を印加していった際、磁束が制御電流ライン等の超伝導部分に侵入していく様子を明瞭に観察することに成功した。なお、この超伝導体中への磁束の侵入については、温度変化させたときのものも観測に成功した。5.この磁束侵入状態で制御電流ラインに電流を徐々に流していった時、ローレンツ力により侵入した磁束分布が変化する様子を観察することに成功した。また、その際電流を反転することにより、ローレンツ力を受ける向きが変化し、結果として生じる磁束分布が異なることも確認した。以上、今年度構築したシステムは、磁気光学顕微鏡としては、これまでにない全くオリジナルな仕様を有するものであり、レーザー顕微鏡としての空間分解能は1ミクロン以下を達成している。よって、今後、このシステムを用いて、単独の磁束量子分布、およびそのダイナミック評価においても十分その性能を発揮して、現在までに未解決な高温超伝導体中の磁束章子のダイナミック評価や磁束量子デバイスの評価への有効利用が十分期待できる。以上の研究成果にっいては、一部出版済み、一部現在投稿準備中である。
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Optical Responses of Josephson Vortex Flow Transistor under Irradiation of Femtosecond Laser Pulses (in press)
Physica C (In press)
Supercond. Sci. Technol. 19
ページ: 941-944