研究概要 |
以下に成果の概要を示す。 1.独自の高感度・高分解能磁気光学顕微鏡システムを構築し、高温超伝導体単結晶試料BSCCOにおける磁束量子の分布観察に成功した。TSFZ法により育成した試料においては、侵入した磁束が結晶成長中に導入される欠陥のため再現性よく結晶a軸方向に配列するのに対し、LPE法により育成した単結晶試料においては明瞭な三角格子状のアブリコソフ格子が観測された。 2.有機金属分解法により、磁気光学材料であるBi,Ga置換型の希土類鉄ガーネット膜の作製を行い、その膜厚、基板、熱処理条件の最適化を行った。その結果、約1.4μm厚の試料において最大の磁気検出感度が得られた。基板については、超伝導薄膜作製用に用いているMgO単結晶基板を用いた場合も、ガーネット膜と比較的膨張係数が近いため、良好な膜が得られることを見出した。 3.磁束量子状態をダイナミック検出可能な高分解能レーザー走査型磁気光学顕微鏡の開発を行った。これを用いて、超伝導磁束フロー型トランジスタのコントロール電流ラインに電流を流した時に発生する磁界のダイナミック観測、超伝導ブリッジ中に補足された磁束量子の観察に成功した。また、システムの空間分解能は0.5μm以下であることを確認した。 4.上記システムの高速性能および感度を評価した結果、準静的な条件下では、現行システムでもローパスフィルターなどの使用により数μT(テスラ)以下の磁気感度を有すること、また、フィルター等を一切使用しない高速シグナル検出に対しても地磁気以下の数10μTの磁気感度を有していることが判明した。この結果は、現行システムにおいても、デバイス構造の最適化を行なえば、磁束量子のダイナミック観察が可能であることを示しており、今後の展開が期待される。 5.ジョセブソンボルテックスフロー型トランジスタを作製し、電流印加、光パルス照射により磁束フローに対応した検出シグナルの観測に成功した。
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